日本天文学会刊行の欧文研究報告誌PASJ (Publications of the Astronomical Society of Japan) で、 XRISMによる初期成果の特集号が発行されました。
https://academic.oup.com/pasj/issue/77/Supplement_1
関連トピックス
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XRISMによる銀河系内硫黄の精密測定
X線分光撮像衛星XRISM(クリズム)は、銀河系内の星間空間に存在する硫黄の量と状態を、これまでにない精度で測定しました。決め手となったのは、XRISMが搭載するResolve(リゾルブ)の優れた分光性能です。明るいX線連星を背景光として利用した精密分光分析により、星間物質中に含まれる硫黄の気体成分と固体成分を同時に検出し、固体相の割合や組成に制限を与えることに成功しました。
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中性子星から吹き出す風とその駆動機構の謎
X線分光撮像衛星(XRISM: クリズム)は、太陽程度の重さをもつ高密度天体(中性子星)から噴出する外向きのガスの流れ(風)と、太陽の数億倍の重さを持つ超大質量ブラックホールから噴出する「風」の間に予想外の違いがあることを明らかにしました。中性子星から生じる「風」の密度が非常に高くかつ速度が遅いことは、これらの「風」がどのように形成されるのかという理解に挑戦を投げかけます。
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超新星残骸W49Bの3次元構造と”両方向噴出”
星の内部で作られた重元素は、超新星爆発によって宇宙空間へと供給されます。その痕跡は「超新星残骸」と呼ばれ、爆発から1万年以上にわたって主にX線で輝きます。X線分光撮像衛星(XRISM :クリズム)は、特異な超新星残骸として知られるW49Bを観測し、超新星爆発によって放出された様々な重元素の特性X線を検出ました。さらに、XRISMが搭載する軟X線分光装置(Resolve:リゾルブ)の優れた分光性能により、鉄などの重元素が運動する様子を捉え、それらが双極状に広がっていることを明らかにしました(図1)。今回の結果は、W49Bがこれまでに例のない、新種の超新星爆発の残骸である可能性を示唆します。今後、星の進化や超新星爆発の理論に見直しを迫ることも期待されます。