X線分光撮像衛星XRISM │ JAXAX線分光撮像衛星XRISM

もっと知りたいX線天文衛星の歴史

History of X-ray astronomical satellites

日本は40年にわたって、X線天文衛星を打ち上げ、世界のX線天文学に継続的に貢献してきました。これまでに運用した6機の衛星には、いずれも、その時々の技術を粋をつくした観測装置が搭載され、それまでだれもみたことがない新しい宇宙の姿を世界に届けてきました

打上げ : 1979年 運用停止 : 1985年

ブラックホール天体「白鳥座X-1」にちなんで命名された、日本初のX線天文衛星。小田稔博士(1971年ブラックホール論文の著者、後に宇宙研所長)が発明した「すだれコリメータ」の搭載により、X線天体の天空上の位置を高精度で決定できるようになった。これにより新たなX線バースト源を数多く発見して国際的に高い評価を受け、我が国のX線天文学を一気に世界トップレベルへと押し上げた。

打上げ : 1983年 運用停止 : 1988年

新開発のガス蛍光比例計数管によりエネルギー分解能を2倍以上に向上させて、X線天体の本格的な分光観測の道を拓いた。主な成果は、我々の銀河系の銀河面に沿って存在する超高温度プラズマからのX線放射(銀河リッジ放射)の発見など。この銀河X線放射の起源と正体の解明を目指して、後続衛星では必ず観測が行なわれるなど、現在まで続くX線天文学の重要研究課題の一つとなった。

打上げ : 1987年 運用停止 : 1991年

当時最大級の面積を持ち高感度でX線天体を観測できる新たな観測装置を搭載。主な成果は、観測開始直後の超新星1987A※のX線検出成功や、多数のブラックホール候補天体の発見等である。この衛星から観測機器を海外研究者と共同開発するなど、国際協力が本格的にスタートした。

※近傍銀河で4半世紀ぶりに発生した超新星だった。同じ超新星爆発から小柴昌俊博士が岐阜県のカミオカンデを用いてニュートリノを検出し、後にノーベル物理学賞を授与された。

打上げ : 1993年 運用停止 : 2001年

日本で初めての本格的X線望遠鏡や世界初のX線CCDカメラ等を搭載したことにより、感度を飛躍的に向上。主な成果は、活動銀河核から放射されるX線に、ブラックホール近傍の一般相対論的効果によると考えられる特徴を発見し、銀河中心部に超巨大ブラックホールが存在することを支持する初めての直接的証拠を得た。また国際公募観測も初めて開始した。全観測データは世界中の研究者に公開・利用されており、論文数が飛躍的に増えることとなった。

打上げ : 2005年 運用停止 : 2015年

「あすか」よりもさらに感度を高めたX線望遠鏡と広帯域をカバーする観測装置を搭載。主な成果は、超新星残骸中の電離非平衡プラズマの検出、衝撃波による宇宙線加速機構の研究、X線反射星雲の発見、厚いガスに埋もれた活動銀河核の発見、銀河団外縁部での重元素分布の観測による銀河団の進化の解明、マグネター(超強磁場中性子星)の放射機構の研究、などである。

ASTRO-H

打上げ : 2016年2月 運用停止 : 2016年3月

従来より広帯域かつ10倍以上の感度を持つ検出器を開発して、宇宙の大規模構造とその進化の様子を捉え、その成長を支配していると考えられている暗黒物質の謎や銀河とブラックホールの共進化の謎に挑むべく、それぞれに特徴のある4種類の装置を搭載した。事故のために観測はひと月で中断したが、その間に銀河団高温プラズマの速度測定や微量元素の検出など、画期的な成果を挙げた。

XRISM

打上げ予定 : 2023年度

「ひとみ」が搭載したX線マイクロカロリメータとX線CCDカメラを搭載。軟X線分光撮像に特化して、「ひとみ」が扉を開いた超高分解能X線分光撮像の世界を開拓する。